『雙眼』

どこまでも続くような暗く細い一本道。河岸の堤防なので、周りの街灯が遠い。
いつもの帰り道。馴染みの道であるのに、何故か今日は見知らぬ顔を見せている。
何か違う。
私がそう感じたとき、突然車のライトが私を飲み込むように照らした。
眩しさに思わず手を顔の前に掲げると、向こうも気付いたのか、上向きのライトを下に下げた。
ホッと一息ついて、細い道のわきに避けて車をやりすごした。

そして、私は反射的に振り返った。

その先。


ボディのないヘッドライトが二つ、闇の中へと滑走していった。



あぁだから、ライトが下がったときも運転手の姿は見えなかったのか、と思わず納得した。


『雙眼』完

こう…日常にふと入り込んだ怪異、みたいなのが好きなんだと思います。