やさしいじかん



秋から冬の渡りの期間
夕暮れから夜までの戸惑いの時間
太陽が名残を見せて沈む瞬間

家路を優しく包む
やさしい光と
夕餉の匂い
ささやかな話声と歌声
一日の終りを知らせて

空は夕闇
空気は青
雲はほんのりと頬を染め
一番星が光りはじめる


たしかにあった懐かしさ
手を伸ばすとするりと抜けて
ぼんやりと思い出すしかできないじかん
あのころ
視線はもっと低く
時間はもっとゆっくりで
毎日が「気持ち」で溢れていて
世界ははるかに広かった

かつてと今の違いを
比べることなど愚かしい

ただあの時間を
柔らかい大きなものに包まれるような
やさしいじかんに
ゆるゆると思いを馳せるだけ

やさしいじかん

とある方のイラストを見て、「あぁそういえばこんな頃もあったよね」と